文=高橋 敬明(たかはし のりあき)
甘粛省の嘉峪関から新疆ウイグル自治区のウルムチに向かう寝台列車で知り合った30代半ばの江蘇省揚州の商人が「信じることが出来るのはお金の力だけ」と言っていました。世界1のスピードで経済成長を続ける中国の今を象徴するような威勢のよい話でした。私が留学した当時から中国は今どう変化しているのか、それが知りたくて7年間勤めたテレビ番組の制作会社を退職、3カ月の観光ビザを取得し、9年ぶりのバックパッカーの旅へと出発しました。
1元が当たり前だった公共バスは、杭州では3元が当たり前になっていました。ショウロンポウ(小籠包)は、10個2元だったのが6元に値上がりしていました。雲南省の山奥を移動した細く、デコボコ道は片道2車線の高速道路になっていました。かつて内緒で泊まらせてくれた一泊30元だった招待所は「外国人断り」に。そのため、今回の宿泊費は想定より大幅に膨らんでしまいました。
89日間で訪れた街は大小あわせて44。沿岸都市から中央、内陸部、そして農村地帯と、数々の「中国」との出合いがありました。