文=コラムニスト・陳言

壇上の山田洋次映画監督は白髪頭とは言え、80歳とは思えない若さを秘めた人物だ。
中国の今の若者に、山田洋次監督の作品を詳しく知る人はあまりいないだろう。だが、改革開放直後の中国では、「幸福の黄色いハンカチ」、「遙かなる山の呼び声」、「男はつらいよ」シリーズなど、山田監督が手掛けた作品を知らない人はいないほど人気を博していた。
1980年代、改革開放政策が実施されていたとは言え、中国人にとって外国の日常生活を窺い知ることができるのは映画だけだったと言えるだろう。中国人が目にした山田監督の作品は、日本の現代的で洗練されたものではなく、田舎の人情味あふれるシーンが満載したものである。立派でもなく、欠点だらけで、そんなどこにでもいる、そんな「普通の人」の日常生活を映し出している。