魯迅直筆の『藤野先生』の原稿(コピー)を北京の魯迅博物館で初めて見ました。表題の「先生」の上部が黒で塗りつぶされ、その右側に「藤野」と書かれています。字配りから塗りつぶされたのは四字だっただろうと推定できます。正解を先に書くと「吾師藤野」を消して、横に「藤野」と書き足し、「藤野先生」の表題にしたのでした。
この「塗りつぶされた四字」は長年のなぞで、昨年亡くなった魯迅の遺児・周海嬰氏もずっと気にしていたそうです。同氏が亡くなる少し前、同氏や日本人の魯迅研究者らの執念が実って、中国国家図書館に保管されているオリジナル原稿を最新のカメラ技術を駆使して、解読したのが「吾師藤野」だったのでした。この発見は日本でもニュースとして伝わっていたようですが、私は初めて聞く話でした。
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魯迅博物館の前庭。先生に引率されて見学に来た北京市内の中学生 (写真=魯迅博物館専属カメラマン・田中政道氏)
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ところで、原稿を見ると、魯迅が如何に几帳面な性格だったか読み取れます。