さまざまな不信感が一時に集中した時、社会全体のムードが「冷淡」になる。同白書は、「高齢者が倒れていても、トラブルに巻き込まれたくないとの思いから、助けてはいけないという声が高まったり、ロンドン五輪男子110m障害で最初のハードルに左足をひっかけて転倒した劉翔選手が『わざとこけた』と疑われたりしたのはいずれも、社会において『信頼』が崩壊しているから」と指摘している。
では、なぜ社会の信頼はこれほどまでに低下してしまったのだろうか。同白書の編集長を務める、前出研究所の王俊秀・副研究員は、まず、社会革新や改革開放(1978年)以来、人々が徐々に見知らぬ人がいない社会を形成していた農村社会から出たことで、元々あった信頼構造に変化が生じたことを挙げ、「信頼の低下は自然なこと」と指摘する。また、社会革新の過程では、市場経済の秩序のほか、法律・法規も整備されておらず、法に基づいた管理がなされないため、詐欺行為が多発するのだ。
王副研究員は、モデルチェンジの時期にある中国の社会の価値観は多元化しているとの見方を示す。社会の価値観の多元化の背後には、さまざまな社会階層や文化背景、生活環境の人々のさまざまな利益や需要、知識体系、情報接触、周囲の社会環境などが影響していると言えるだろう。ただ、それは、「価値観の共有の欠乏」という問題を浮き彫りにもしている。
王副研究員は「制度という観点から社会の信頼に関する問題を解決することが必要」と指摘。「制度や法律、管理構造を通して、信頼に関するリスクを低下させ、社会の信頼回復のために、特に、信頼の核心部分である『公権力』から着手しなければならない」との見方を示した。
「人民網日本語版」
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