2013年2月23日の第183回国会における安倍晋三首相の施政方針演説は、新政権の三つの外交基本原則について説明した。一つ目は戦略的外交で、中日の戦略的互恵関係を重視する。二つ目は価値観外交で、いわゆる民主主義・人権・法治主義などを推進する。三つ目は積極的・能動的外交で、国家の利益を重視し日米同盟を維持する。

安倍首相は二度目の就任を果たしてから100日余りで、上述した三つの外交基本原則を発表し、迅速な行動であると言える。現時点では、対中国戦略的外交がスタートされていないが、その他の外交原則は相次いで実行に移されている。しかし開始直後につまずきを繰り返し、大きな成果が得られているとは言いがたい。

対中国外交の遅れ

安倍首相は就任直後、対中国の「戦略的外交」の門を開くことを急いでいないように見える。中日の戦略的互恵関係は、安倍首相が初就任時に提唱した「特許」であるが、安倍首相は中日関係の処理を急ぎすぎてはならず、「切り札を残しておくべきだ」とした。安倍首相は「急がば回れ」ということわざにより、その本心を表明している。

安倍政権の中国に対する「戦略的外交」の遅れには、次の三つの原因がある。（1）中国の新指導層が発表する全体的な外交戦略、特に対米・対日政策の立場・態度の明瞭化を待つ必要があるため。（2）価値観外交と積極的・能動的外交を先に推進することにより、日本の新政権の能力とイメージを示し、中国に戦略的外交を実施するための国内外の環境を改善し、今後の駆け引きに向けた政治資本を増やすため。メディアは、「安倍首相のモンゴル訪問は本人の強い意向によるもので、当初は予定されていなかった」と伝えた。安倍首相が価値観外交で成果を獲得し、中国の周辺で価値観を共にする盟友を見出そうと焦っていることが分かる。（3）「中日互恵・戦略関係」は安倍首相が2006年の初就任時に提唱したものだが、中身と実行性を伴う具体的内容が盛り込まれていない。

そのため安倍首相は直ちに戦略的外交を実施しようとしても、どこから手を付ければ良いか分からない状態だ。また石原慎太郎氏による島の購入事件を受け、中日の島を巡る係争が激化している。この舌端火を吐く、一触即発の緊張情勢下、安倍首相は戦略的外交実施の時期が未だ熟していないと考えているかもしれない。