これらの措置により、信頼できる市場の了解が生まれた。日本政府は2%のインフレ目標を達成するまで、円相場に対する圧力をかけ続けるということだ。ちょうど安倍首相が登板した当時、日本の国際収支はそれまでの黒字から赤字に逆転。これは強い円の最も重要な柱に亀裂が入ったことを意味している。世界の金融学を専攻したすべての学生が学んだであろう金融の基本原則は、経常収支が黒字の国の通貨は一般的に価格が上昇し、赤字の国の通貨は一般的に価格が低下する、というものだ。こうして国際投資資本は円の空売りへの意欲を極めて大きくかき立てられ、日本銀行(中央銀行)が量的緩和を全面的に展開する前に円相場は大きな圧力を受け、大幅な円安となった。
だが円安が始まると、どれくらいの円安が適当であるかがすぐに安倍政権の課題になった。円安は日本経済にプラスだが、日本政府は無制限に円安を推進できるわけではない。日本政府の強硬な態度を受けて、市場には円安は継続するという観測がたちまち広がり、この観測がコントロール不可能になれば、資本が持続的に日本から流出することは避けられない。日本国内の金利は低く、欧州、米国、多くの発展途上国の金利は日本に比べれば高いため、当期の利差益と将来の円安による外国為替差益の二重の誘惑に駆られて、円資本が大規模に流出し、ひいては日本国内の資金調達コストに大きな上昇圧力をかけることになる。最大の危険は日本政府自体の財政の持続可能性がゆらぐことだ。
2013年3月末現在、日本の国債残高は約814兆3千億万円だった。これはつまり、国債の収益率が0.01%上昇すると、日本の財政予算における利息の支払いは約814億円増えるということだ。経済喚起策が推進されるのに伴い、日本国債の規模も拡大することは確実で、国債収益率の上昇がもたらす財政圧力も急速に増大するとみられる。こうした動きは、国債の発行による収入がすでに税収を上回り、国債の償還資金と利息が財政予算に占める割合が20%を超える日本政府にとっては受け入れがたいものだ。こうした動きによるリスクを避けるため、日本銀行は長期国債の購入量を増やして収益率の上昇を抑えようとしたが、結果は不満足なものに終わった。最近、日本の10年もの国債の収益率は0.8%の前半が基本で、4月5日に記録した今年の最低値0.32%とは大きな開きがある。
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