抗日根拠地(中日戦争中、中国共産党が実質支配していた地域)における教育事業の主なものの一つに小学校教育事業の建設推進が挙げられる。「中央政府宣伝部の各抗日根拠地内の小学校教育に関する指示」(以下「指示」と略す)によると、抗日根拠地における小学校教育は「三・二年制(初級小学校3年・高級小学校2年)」又は「四・二年制(初級小学校4年・高級小学校2年」を採用している。初級小学校を義務教育と定められ、規定に則った教育活動が実施されてきた。
「指示」によると、抗日根拠地における小学校の教育課程には、初等一般教育に必要な自然、社会、労働などの知識、技能、学習方法が組み込まれている。初級小学校の課程には国語(一般常識を含む)、算数、唱歌、体育を必修教科としている。国語は初級の普通教育に必要な自然、社会、労働の知識、技能及び学習方法、規定される自然、社会及び労働を主要な内容としている。高級小学校の課程は、国語、公民、一般常識、算数、自然、歴史・地理、唱歌、体育を主な教科とし、副次的教科として時事問題・政治の教育を行なっている。公民・常識は根拠地建設を主な内容とし、生産及び衛生知識を含んでいる。体育は準軍事化教育を含んでいる。
「学校が戦場、教室が戦場である。抗日戦争の教育であり、建国の営地である。社会と関係なくして教育は存在しない」。抗日戦争・建国には国民の士気の高まりが必要であるとする出発点から、抗日根拠地で使用される教材は、一般知識の普及に努めるだけでなく、抗日と救国の精神を培うもので無ければならなかったのである。
抗日根拠地とて名の高い山西省晋中市左権県を例に挙げてみよう。左権県政府及び晋冀魯豫辺区政府教育部門編集、華北新華書店及び太行文化教育出版社発行の小学校教材中、抗日の宣伝及び戦争動員の内容が数多く記載されている。「鉄証:王艾甫抗日収蔵品精選」(新世界出版社)中の貴重な抗日戦争時の資料や写真にも、抗日戦争時の左権県の小学校の教科書や副教材を見ることができる。「抗日戦争」の版画を表紙とした、小学校の自然、地理の教科書や、中国国民の抗日戦争の話を題材とした「国語読本」や「歴史課本」、抗日戦争のために編集された「戦時読本」及び「戦時新課本」なども見られる。
抗日根拠地の小学校教育の建設は、農村住民の教養向上を促進しただけでなく、その後の中国の教育事業の発展の土台を築いたものであった。また抗日、救国の精神を高めることで、国や家族のために身を投じる若者が増え、抗日戦争を勝利へと導く条件が整っていったのである。
「中国網日本語版(チャイナネット)」