北京市内の中央オフィス街の一角に、中国国内で最も早く設立された絵本専門の書店がある。この「ポプラ絵本館」に最近、評判を聞きつけた多くの親子連れが訪れている。ただこの絵本館とそれを運営するポプラ文化発展有限公司を設立したのが、日本で最大の児童向け出版社であるポプラ社であることはあまり知られていない。ポプラ絵本館の歴史は、2003年に設立されて以来、中国の絵本の発展とともにあった。
ポプラ絵本館の総経理である石川郁子さんは「当社の歴史は前社長の坂井宏が1990年代に初めて北京の図書博覧会に参加したときから始まります。当時中国には児童書がなく、特に世界で有名な絵本がありませんでした。そこで彼は中国で児童書を出版することを思いついた」と教えてくれた。
石川さんは1989年、中国語を学ぶために中国に来て、その後は中国の作家である王朔の『北京無頼』などを翻訳、さらにその後ポプラ絵本館の立ち上げに参加した。こうして現在に至るまで中日文化の伝道役という重要な使命を果たしている。
▼オリジナルな絵本が不可欠▼
ポプラ絵本館の設立当時、中国の書籍には絵本というジャンルがなく、値段もとても高価であった。さらに中国人の教育に対する考え方が異なっており、外国の絵本がそのまま受け入れられることはなかった。石川さんによれば、『パパの新しい恋人』という片親の家庭を扱ったものなどは、中国の親たちにとって、子どもには決して触れさせたくないものであったという。
ポプラ絵本館は、中国で絵本を普及させるために上海と瀋陽で相次いで何軒かの絵本館を開設した。そして中国の親たちに、世界に有名で有益な絵本をすすめた。最近になって中国では所得も増え、大都市に住む若い親たちの教育観も大きく向上。中国の絵本市場も急成長をとげた。毎年発売される絵本の数も2000冊を超えている。
絵本の作者探しからテーマの選定、本の製作、宣伝広告、版権の輸出まで、ポプラ絵本館はさらに中国の優秀なオリジナル作品の選定にも協力している。さらに日本のベテラン編集者を顧問として呼び寄せ、中国独自の絵本の編集を支援している。石川さんは「国が真の絵本文化を打ちたてようとするなら、オリジナルな絵本が不可欠である」と語る。
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