冒険の精神に欠ける日本
1960-70年代、日本では、松下幸之助氏を代表とする多くの企業家が登場した。しかし、今では日本の企業は、世界に対する影響力を大きく失ってしまった。今の日本では、成功例として世界に知られるビジネスマンがなぜ生まれないのだろう。鷲田准教授は、「イノベーションの問題は結局のところ人の問題」と指摘する。
ある調査によると、日本の若者の留学や起業に対する願望は、他の国の若者を大きく下回っている。マネジメントコンサルタント「ガンガー総合研究所」の創始者・藤井義彦氏は、「若者にとって、大企業の終身雇用制度は依然として魅力となっている。経済が低迷していると、若者は『安定』を求める」と分析している。
そんなムードの中、起業の新たな波が起ころうとし、日本式イノベーションの「テストフィールド」と見られるようになっている。ミドリムシの屋外大量培養に世界で初めて成功した株式会社ユーグレナの創業社長・出雲充氏は、「若者が育たなければ、日本は弱くなってしまう。『起業』が日本の最後のチャンス」と指摘する。
在東京品川区にあるスタートアップインキュベータ株式会社サムライインキュベートの中に、コワーキングスペース「サムライスタートアップアイランド」があり、そこでは、ジーンズにTシャツ姿の若者が木製のデスクでコーヒーを飲みながら、ノートパソコンに向かっていた。同社代表取締役CEOの榊原健太郎氏は、60社以上に投資し、目標は起業者の「聖地」を作ることという。
しかし、イノベーションの成果を実際に出すにはまだ克服すべき課題が山積みだ。インキュベーションを行うことを目標に掲げている投資ファンド「WiL」の伊佐山元最高経営責任者(CEO)は、「日本の文化は、失敗した人に冷たい。そのため、個人起業者は埋没費用に直面しなければならない。これも、日本と米国の起業環境の大きな差」と指摘する。
伊佐山CEOは、シリコンバレー式の冒険の精神を日本に取り入れたいと考えている。しかし、「『安定』を追求する農耕社会出身の日本人は、リスクに対して独特の考えを持っている。リスクを回避するために、日本の投資家は、『起業家が自分で株式を買い戻す』という条項を盛り込む。金融機構も、起業家がお金を借りる際に、重要な個人資産を担保として要求する」と現状を嘆く。一方、米国では、賢く失敗し、一からやり直すチャンスがたくさんあるという。
「冒険の精神を奨励する社会を構築することが、日本の今後の課題。イノベーション大国になるためには、いろんなことを試し続けられる環境が絶対に必要」と伊佐山CEOは語る。
「人民網日本語版」
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