■バラエティーに富む名字
日本には、100人以下の珍しい名字が少なくとも1万種類あり、そのうち、「鳳凰」、「夜桜」、「十六夜」などは、存続の危機に瀕するほど、少なくなっている。これらの名字は珍しいだけでなく、その漢字に日本の情緒を感じる。
宗教の影響から、日本では「神」や「鬼」などの要素が入った名字が数多くある。例えば、「神」、「仏」、「龍神」、「地藏」、「鬼」、「百目鬼(どうめき)」「無量塔(むらた) 」、「釈迦牟尼仏(にくるべ)」などだ。さらに、「正月一日(あお、あら)」、「四月一日(つぼみ、わたぬき)」、「八月一日(はっさく、ほずみ)」など日付が名字になったもの、「一尺八寸(かまづか)」など長さが名字になったもの、一二三(ひふみ)、三九二(みくに)、七五三(しめ)、九九九など数字が名字になったものもある。また、「猪股」、「牛腸(ごちょう)」、「鴨頭(かもがしら)」、「鶏尾(けいお)」、「馬尻」、「蜘手(くもで)」、「蚊爪(かづめ)」、「犬飼」、「牛糞(うしくそ)」など動物が名字に入っているもの、「福岡」、「東京」、「京都(みやこ)」などの地名が名字になったもの、「鍛(かじ)」、「忌鉄師(いみがぬち)」、「膳夫(かしわで)」など職業が名字になったもの、「塩」、「砂糖」、「醤油」など食品が名字になったものなど、さまざまだ。そのほか、「千寿」、「万福」、「万代」、「幸福」など、おめでたい名字や、「鼻毛」、「我孫子」、「御手洗」など、おもわず笑ってしまいそうな名字もある。
一方、同じ漢字でもさまざまな読み方ができる名字もある。例えば、最も簡単な「一」には、「いちもんじ」、「でかた」、「にのまえ」などの読み方があり、「海部」には14通りの読み方がある。また、珍しい名字の1つ「小鳥遊(たかなし)」は一見しただけでは読み方が分からないが、その由来は「小鳥が遊ぶ」→「天敵がいない」→「鷹がいない」→「たかなし」だという。「八月一日」は、旧暦8月1日に実る稲の穂を摘み贈る風習が由来と言われている。「鴨脚(いちょう)」は、銀杏の葉が鴨の足に似ていることから中国語で銀杏を「鴨脚」と書くことに由来しているとされている。このような読み方は、外国人はおろか、日本人でさえすぐに正確に読むことは至難の業だ。
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