中国にとって、中韓FTAの地域経済に関する戦略的意義は、直接的な経済効果を大きく上回る可能性がある。中韓両国にはこれまで「経済貿易関係は政治関係を超える」という説があった。中韓両国の経済貿易関係は密接だが、政治・安全保障の分野については相対的に提携交流が進んでいないということだ。しかし経済貿易関係が緊密になるに従い、中韓両国はすでに政治・安保などの分野でも協力を強化しつつある。中韓両国の貿易額はすでに韓国の対外貿易額全体の4分の1を上回っており、韓国-米国、韓国―日本、韓国-EU間の貿易額全体をも上回る。中韓FTAが発効すれば、韓国の中国経済に対する依存度は上昇が避けられない。これを踏まえ、中韓両国首脳は近年、頻繁に接触を重ねている。これに伴い、政治、安保、文化などあらゆる分野で「全方位の」交流と協力が進み、経済協力により政治的協力を促す契機ともなる。
経済貿易関係が安保戦略関係に影響するかどうかは、見方が分かれる問題であり、ケースバイケースとも言える。筆者個人は中韓両国の経済貿易と安保戦略について、相互に影響し合うとみている。当然のことながら、安保戦略関係が第一義的、経済貿易関係は二義的なものとなるが、一定の条件下では経済貿易関係が安保戦略の変化を促すこともある。2つの例を挙げよう。1つは、中国の反対を踏まえて韓国が米国のTHAADミサイル(終末高高度防衛ミサイル)配備に二の足を踏んでいること。2つ目は、日米が反対するなか、朴槿惠大統領が中国の9月3日の抗日戦争勝利記念行事に出席したことだ。現在、「中韓経済共同体」の設立はほぼ完了し、安保戦略を含む「中韓運命共同体」も再構築が進んでいる。これは中国、韓国、ひいては北東アジアにとって非常に重要な意義があり、まさに地域政治の規律に則った結果と言えるかもしれない。
「中国網日本語版(チャイナネット)」
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