さらに2005年11月には、吉林省の中国石油吉林石化公司の工場で8人が死亡し、70人近くが負傷、数万人の住民が緊急避難するという爆発事故も起きている。当時の事故では爆発による被害だけでなく、アムール川の支流である松花江で深刻な水質汚染が発生した。その結果、ハルビンなどの都市は数日間深刻な「水危機」に見舞われ、被害住民は100万人を超え、さらに被害はロシアにも及んだ。
10年後の天津で、深刻な危険物の爆発事故が再び発生した。人々の不安が高まるのは当然である。どのような危険物が爆発したのか?深刻な環境汚染につながる恐れはないのか?当局の緊急処置は有効に作用したのか?シアン化合物は完全に取り除けるのか?現地の水や土への影響は?汚染された大気が北京やそのさらに遠くまで運ばれることはないのか? しかし実際には天津の爆発事故と吉林省の爆発事故では、爆発した場所や緊急処置などの点で大きく異なっている。
その第一は、立地条件が異なることである。吉林石化公司は高い位置に立地しており、大量のベンゼン汚染物を含んだ消防汚染水が、付近の松花江に流れ込み、深刻な汚染問題を引き起こした。しかし天津港の瑞海公司は平地で面積の広い天津港物流センターに位置している。しかも天津で爆発事故によって大きなくぼみができ、それが汚染水の外部流出を防ぐ役割を果たしている。
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