▽けんか両成敗
私は近年の国民感情悪化の主な原因として①日本人の自信喪失と中国人の自信過剰②日本の対中脅威論と中国の対日脅威論③双方の狭隘なナショナリズム-の3点を挙げたい。この3点は互いに刺激し合って膨らむという「負の連鎖」を続けてきたようだ。
1979年12月の大平正芳首相の訪中で始まった対中円借款(累計3兆3165億円)は中国の経済発展を後押しする原動力となったが、2007年12月に新規供与を終了した。10年、中国は国内総生産(GDP)で日本を抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国となった。中国は大国外交に力を入れ、軍事力を強化し、海洋進出を積極化させた。
巨大な隣国の急速な発展に伴って、日本人は自信を喪失し、日本国内では対中脅威論が強まった。中国はAIIB設立や「一帯一路」など積極的な対外戦略を打ち出したが、日本の右傾化や軍国主義復活への懸念から対日脅威論が強まった。その結果、日中双方のメディアやインターネットで、狭隘なナショナリズムに基づく過激な発言も目立つようになった。
国交正常化から40年余りが経過し、日中両国の立ち位置は大きく変わったが、両国ともにその変化に適応し切れていない。「両雄並び立たず」ではなく「並び立つべし」であり、「和則両利、闘則倶傷(和すれば両方に利し、闘えば共に傷つく)」ということを日中両国は共に肝に銘じるべきだ。
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